Rim Design Office

一級建築士事務所

鹿児島の調査記録①

お世話になっているクライアントの実家でカビが発生して困っているという話から、原因を突き止め改善策を立てるために一泊2日で実家のある鹿児島まで調査に向かった。今回は少し長くなるが、調査の様子と対策をまとめてみる。

当日は快晴、日中の気温は30℃を超えている
築36年木造50坪の平屋の日本家屋だ。
10年前に屋内のリフォームを行っていて、キッチン、便所などの水回りを移動し、
浴室を在来からユニットバスに変更している。

カビは梅雨時に多く、複数のクローゼットや押し入れ全般、その中の衣類、家具、畳などで
クリーニングに出した衣類のビニールを外してクローゼットにかけていても
一晩で衣類にカビが生えてしまうそうだ。

カビは湿度の高い空気が動かずに滞留することで発生しやすいため
まずはその原因調査。湿気、空気の滞留の原因を探ることにした。
床下や小屋裏の換気不足で湿気が滞留していることも予測されるが
安易に床下や小屋裏に換気扇を設置するような対処療法は避けたいと思っていた。

屋外から調査を開始。まずは床下換気口表面で風速を測定すると平均0.3m/s程度あり、換気口のつまりもなし。
緩やかな自然通風があり、床下が多湿という状態ではなさそうだ。
次に小屋浦換気口。入母屋屋根はセメント瓦葺き。

小屋裏換気は軒下に換気口をつけることで行っている。風量計をあてると換気口の表面風速がかなり弱い。
小屋裏は換気不足の感。

浴室、レンジフード、便所の換気扇は問題なし。浴室の換気ダクトが天井内で外れ、
浴室の湿気た空気が天井内に拡散され、カビが広がる事例もあるのでダクトも要確認ポイントの一つだ。

次に屋内を一通り見て回る。今日は湿度が50%程度なので、カビが生えているところはないが、木製建具の鴨居、建枠などに結露を繰り返したような跡が見られる

換気扇はトイレと浴室、キッチンのレンジフード。室内の空気を滞留させない観点では
居室にはやはり換気扇を設置したいところだ。
建築基準法では人の過ごす部屋はシックハウス対策のために24時間換気設備が義務付けられているがそれも2003年以降のため、この年代の建物では一般的な状態だ

クローゼットの扉は通気口やガラリがないので扉を閉めると中は空気の流れがなく、結露しやすい環境。

鹿児島は周知のとおり桜島の噴火があるので、火山灰が市内に飛ぶことがある。
窓を開けていれば当然室内にも入る。
クライアントのご両親は鹿児島以外での生活が長かったこともあり、火山灰の中での生活に慣れていない。
そのため、窓を締めて空調する生活が多く、特に空調されていない部屋や時間帯は結露もしやすい環境が推測される。

今回の調査は地域環境をよく知る地元工務店に施工側の意見も聞いてみたいと思い、
住宅インスペクションを一緒に依頼した。

 

調査前、多湿を理由に床下でシロアリが発生して土台などの構造体が被害を受けている事態も心配していたが、その点は、インスペクション結果でも問題なし。外壁に軽微なクラックが見られる程度で建物の状態は健全であった。

これは家主の定期的なメンテナンスの効果が大きい。家主のお父様は修繕を細かく記録されており、今回のような原因を探っていく際に大変役立つ。

次回は「鹿児島の調査記録②」にて小屋裏、床下調査、原因、対策をまとめます。

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鹿児島2日目の朝日と海と桜島